大阪駅で視覚障害者向けのツールを体験してきた
JR西日本のアクセシビリティ
JR西日本には体に不自由を抱える方へ様々な支援を行っています。
目の不自由なお客様というページに視覚障害者向けの支援内容もまとまっています。視覚障害者支援の一環として視覚障がい者ナビゲーションシステム「shikAI(シカイ)」があります。今回shikAIを利用体験してきました。
「shikAI」について
アプリの概要
アプリの概要は以下のとおりです(制作元の公式サイトより抜粋)
「shikAI」のQRナビゲーションシステムは、駅構内の点字ブロックに表示したQRコードを、専用アプリで起動したスマートフォンのカメラで読み取ることで、現在地から目的地までの正確な移動ルートを導き出し、音声で目的地までナビゲートするシステムです。
各QRコードには正確な位置情報が紐づけられており、視覚障がい者の方が迷うことなく、ホームから改札を通り出口まで向かうことを支援します。
視覚障害者は、画面読み上げ機能が標準搭載されているiPhoneを所持していることが多いとのことで、iPhoneでのみ利用が可能なアプリとなっています。
東京メトロ構内にも導入されているようなので首都圏にお住まいの方も興味があれば利用してみてください。
JR大阪駅での利用可能範囲
JR大阪駅では、西口からうめきた地下口の改札内で利用が可能です。行き先は西口またはうめきた地下口から各方面乗り場前の階段、トイレ、エレベータ、改札へのルートを選択できます。
JR大阪駅西口構内図
JR大阪駅うめきた地下口構内図
西口付近には2025年現在JPタワー大阪(KITTE大阪)があります。うめきた地下口にはグラングリーン大阪があります。いずれも梅田再開発エリアの最新スポットです。
アプリを利用してみた
アプリ利用の一連の流れ
shikAIは事前にアプリダウンロードと利用登録(無料)をしておく必要があります。
アプリを立ち上げて「ナビゲーション」を選択します。
駅構内のQRを読み込むと案内可能な箇所が提示されます。
構内のQRのある地点であればどこからでも利用開始が可能です。
行き先を選ぶと音声案内が開始されます。案内中の画面は以下画面のまま切り替わりません。
案内前に行き先までの距離(メートル数、地点数)を教えてくれます。地点数とはQRを読み込んで音声案内してくれる数のことです。音声案内では歩く方向と距離を教えてくれるので、その通りに進みます。
例えば「直進8メートル」と指示が出た場合、案内通り誘導ブロック(点字ブロックの一種で進行方向を示すブロック)に沿って8メートル進むと、警告ブロック(点字ブロックの一種で危険箇所や誘導対象の位置を示すブロック)内に次のQRコードがあり、スマホをかざすだけでQRを読み込み次の音声案内が行われます。一部誘導ブロックがない箇所や別の誘導ブロックに合流する箇所がありますが、そこもあらかじめ音声案内があります。
QRコードはカメラモードにしなくても付近に近づけば自動的に読み込み、次の指示をしてくれます
目的地まで進むと目的地到着と案内終了を知らせて音声案内は終わります。
階数移動は階段利用を指示
駅構内移動中に、目的地によっては階数移動が伴います。途中エスカレーターと階段がありますが、常に移動は階段を指示されます。進行方向のエスカレーターに乗車しようとすると乗車口前のQRコードが読み込まれて、「誤った方向に進んでいます」と言われて階段を使うよう指示が来ます。エレベーターを行き先に指定すれば、場所によってはエレベーターを使うことも可能です。
左はエレベーター、右が階段
階段の上り下りの際は、階段の詳細を細かく教えてくれます。段数、踊り場の数、左の手すりを使うこと、途中で手すりがカーブする場合は曲がる回数も教えてくれます。
3つの踊り場や手すりのカーブがある階段 この情報も教えてくれます
トイレは男女の中間地点へ案内
男女分かれるトイレはどう案内するのだろうと思っていたら、ちょうど双方の入り口の間のところに案内されました。そこに着くとトイレ前の自動音声が流れて、どちらが男子/女子という案内や多目的トイレの場所も教えてくれます。関西の駅ではこの音声案内をよく耳にする方もいるのではないでしょうか。
点字ブロック上に立つと音声案内が始まる
アプリを利用した感想
よい点と要望
スマホと施設が連携して目的地へ誘導する仕組みはとても興味深かったです。アプリやQRコードだけで完結せず、点字ブロックや既存の駅構内にある音声案内を組み合わせることによって支援を実現していて素晴らしいと思いました。
ただ駅構内でこのアプリの情報を見つけられなかったので、皆分かりやすい場所にアプリの案内が欲しかったです。駅は普段利用しないお客さんも訪れる場なので、そんな方も使えるようにこのシステムを周知させて欲しいです。また、構内に設置されたQRコードには特に説明がないので、システムを利用しない駅の利用者にとっても何かわかるといいなと思いました。もしかしたら地図を理解するのが苦手な晴眼者(視覚に障害のない人)も利用を検討するかもしれません。
ユーザーの使用感を知りたい
実際に視覚障害者がアプリを利用しながら移動する際、音声案内をどう聞くのか知りたくなりました。人が多い中で音声をスピーカー再生で聞くのは抵抗があるかもしれない、でもイヤホンを利用すると歩くときに周辺の音が聞こえなくて危ないのでは…など、晴眼者の私の利用では想像ができない部分がありました。視覚情報を得られない中、アプリの音声を聞きつつ周りに気をつけながら歩くことへの難易度を知りたいです。
(実際に今回私がアプリを利用した際は片耳だけイヤホンをした状態で音声を聞き、片耳は周辺の音を聞いていました)